疾病の原因に対してではなく、主要な症状を軽減するための治療を対症療法と言い
それに対し症状の原因そのものを制御する治療法を原因療法と言います。
東洋医学ではこの対症療法のことを標治法、
原因療法のことを本治法と言ったりするんですね。
例えば肘が痛いと患者さんが訴えておられるとします。
この場合肘の痛みに対してだけ治療ならば標治法。
全身のアンバランスの結果として肘痛が出ていると考え
その全体のバランスを整えることで肘痛を解決しようとするならば
本治法と言えます。
当院は本治法(原因療法)を基本としています。
上記の様な肘痛などは直接的な打撲以外は首からの腕神経叢が関与していることが
多く、首を治療することはより本治法的と言えるでしょう。
さらに首の問題は脊柱(背骨)全体のバランスを診なければ改善に導くことは
困難な為、その土台となる腰、骨盤を整えることは更に本治法的です。
そして体幹部全体のバランスをそこから診ていくなら臓器のバランスも
整えることが求められますね。
はり灸治療では、こういうことが元々基本思想としてあるので
やりやすいと言えます。
ちなみに世の中の鍼灸治療を行う方で、この本治法をやっている方は
少数派ですので参考まで。
さて、私自身はついた師匠が良かったので、本治法をその基本に
おいて施術してきました。
しかし、実のところ肉体においての本治法では、本当の意味での
本治法では無いと言うことに最近気がつかされたんです。
ある患者さん、仕事が凄く忙しくて、自律神経のバランスを崩しておられる
ご様子。
はり灸で五臓六腑に関わる経絡を調整して、主訴の部分にも施術すると
症状は改善するのですが、所詮仕事の忙しさは変わらないので
元に戻ってしまう。
となると、仕事の忙しさを解消することが本治法となるはずです。
仕事の忙しさなんて、自分ではどうしようも無いと
思っておられましたが、じつはこれも自分がその状況を
招いているんです。
瞬間風速で忙しくなることは誰でもありますが万年多忙という方は
やはり自身で招き入れています。
自己愛を正しく持てない方は、破滅的に自己犠牲をしてみせます。
カラダに無理をしていても、忙しさから逃げようとしません。
一見責任感が強くて賞賛すべきとも言えますが、カラダは
悲鳴を上げているのです。
そして別のケースでは、カラダの限界を超えて精神にまで異常を来し
「うつ症状」にまで発展していました。
これは健全な態度とは言えませんね。
自分のキャパシティを超えているなら、周りの人に
助けを求めれば良いのです。
でも自己愛が持てない為に、遠慮して頼めない。
その根底には「こんな私の事なんて助けてもらう価値が無い」という
自己否定があるのです。
逆にしっかり主張して、自身が働きやすい環境を獲得するヒトも
いるのですから、助けてもらったって良いんです。
これは陰陽五行のバランスで言うと「火」のエネルギーが
不足していることが多いようです。
なので、ここを治療すれば正常な自己愛が持てる!
・・・・と行ってくれれば簡単なのですが
ことはそう単純ではありません。
キチンと問題意識を持ってもらって、カラダを関連づけないと
ただの刺激療法にしかならないのです。
なので初めのセットアップが肝心です。
しっかり問題を認識してもらい、その事によって反応した経絡を
調整すると、脳内の認知は変化するのです。
上記の症例も、これを行っての治療後は、実際の行動が変わります。
行動が変われば、状況は変わります。
そうするとストレスは随分と緩和されるわけですね。
こうやって肉体だけで無く原因の原因までアプローチして、
その方の認知まで変化させてこそ
本治法なのだと、今の時点では考えています。